下記の文章を書いた当時（９７/１１）は「カン・スージー」と呼ばれていたため原文のままとしました。
私が初めてカン・スージーに出会ったのは、「ＣＤジャーナル」誌の試聴記のページ、つまり日本でのアルバムデビュー盤の記事(注)でした。日本のＢ級アイドル的な表現で、音程もイマイチと紹介されていました。１９８３年前後のアイドル歌手を守備範囲としていた自分にとって、これは「買い」だな、とマークしていました。カン・スージーという名前を見た時、いつ、どこで見聞きしたかは記憶にありませんでしたが、なぜか頭の片隅に残っていた名前でした。店頭でＣＤの現物を見たとき、ジャケットのデザインも含めて、頬づえをついて微笑んでいる彼女の美しさにはっとして、その場で購入しました。聴いてみると、第１曲目（「ポラピッヒャンギ」）の軽やかなメロディーと、とても美しい発音の声にすっかり魅了されてしまい、「ＣＤジャ−ナル」での誌評がとても的外れなものであったことを感じました。
実は、韓国のアイドル歌手のレコードを買うのは、カン・スージーが初めてではありませんでした。学生時代、韓国語会話の授業を取っていた私は、１９７８年、ヘウニという歌手の日本でのデビュ−ＬＰ（「ヘウニ・ファースト」）が発売された時、韓国のアイドル歌手への興味から買ってみたのですが、アイドル歌手というよりも本格派歌手といった印象で、当時大場久美子やアグネス・チャンのようなアイドル歌手像を期待していた私にとって強いインパクトをあまり感じず、その後韓国の歌謡曲（ポピュラー・ミュージック）に関心を示す機会はありませんでした。
私がカン・スージーに本格的に関心を示すようになったのは、タワーレコード千葉店で見かけた、「韓国ポピュラー音楽学会研究紀要３」を購入してからでした。紀要には、カン・スージーの記事が載っていて、韓国ポピュラ−音楽界で彼女が大御所的存在であることを初めて知り、「紀要３」に載っていたニフティサーブ内のパティオ「カンファンジャン（光化荘）」のＩＤとパスワードにより、早速アクセスし、晴れて当「韓ポ」の正会員となったのでした。
当紀要の発行者であるＹ氏と割と近くに私が住んでいたこともあり、早速Ｙ氏と会い、カン・ス−ジ−の全ＣＤを聞く機会に恵まれ、また紀要別冊の「コリアン・ソング・リスト」を入手し、日本のカラオケにカン・ス−ジ−のレパ−トリ−があることを知り、一人でカラオケ屋に通い、彼女の曲を歌うことに喜びを感じるようになっていきました。まず歌い出したのは、私と彼女の出会いの曲「ポラピッヒャンギ」でした。「紫色の香り」というタイトルにも、とても新鮮なものを感じ、あの軽やかでウキウキするようなメロディ−を繰り返し歌ううちに、他の彼女の曲も歌ってみたくなり、近所のカラオケ屋に入っている通信カラオケの機種をリサーチし、平日昼間の料金の安い時間帯を狙い（現在私の仕事の勤務形態により平日の休みが多いことが幸いし）、私のカラオケ屋通いが始まったのです。もちろんカン・ス−ジ−のナンバ−だけを歌っていたわけではありませんでしたが、最初と最後にはカン・ス−ジ−の曲を歌い、満足してわが家に帰っていきました。歌っていると、メロディ−や歌詞の細かい歌い回しが気になるようになり、楽譜が欲しくなり、「韓ポ」のメンバ−の協力で、彼女の曲の楽譜が掲載されたＮＨＫハングル講座のテキストのバックナンバーを入手したり、韓国で発売されている彼女の曲の入っているピアノ譜を注文したりと、徐々に彼女の世界に引き込まれていきました。
そうこうしているうちに、彼女が日本のミュ−ジカル「９９９」に出演することを知り、生の彼女の姿を見たいという強い衝動にかられ、先日早速「９９９」を見に行ってきました。宇宙服のような銀色のコスチュ−ムに身を包んだ「クレア」は、私の想像していた通りの、か細くてとてもかわいい女の子でした。出演者の中で唯一外国人の彼女が、一生懸命日本語のセリフに感情を込めて演じる姿には胸がいっぱいになり、「銀河の果てまで」を歌う彼女には思わず涙してしまいました。
「韓ポ」のメンバ−になった私ですが、他の歌手には浮気（？）をせず、当分の間は彼女一本でいくつもりです（私の心を強く揺さぶる他の歌手に出会う機会が訪れれば話は別でしょうが）。また、彼女には過去にいろいろなことがあったようですが、私は今を生きている彼女、そして彼女の歌が大好きです。私がヨボヨボのじいさんになっても（それまで生きていればの話ですが）彼女を愛し続けていくつもりです。
これからも私の乾いた心に夢を与え続けておくれ！！ カン・ス−ジ−！！
（１９９７年１１月２８日記）
(注)掲載された記事は以下のとおり（原文のまま）。
★カン・スージー／セルフ・セレクション〜韓国オリジナルソングBEST12★
メーカー/レーベル：TO / イーストワールド
品番：TOCT 9144
発売日：1995年9月20日
税込価格：3059円
コメント：韓国の音楽界には歌のうまい人しかいないというイメージを長い間持っていたので,彼女を初めて見た時はのけぞった。不安定な音程だけを取っても日本のアイドルの比ではない。そんな衝撃がまざまざと蘇ってくる韓国語ヒット選。時代は変わったということか。